いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 ありえないんだもん、などと言われても、現にここにこういう現象が起きているじゃないか! と行は思うのだが、菊政にすれば、「それは嘘だもん!」という事になってしまうので、行には対処のしようがない。どうにか言を尽くせば納得させられるだろうか? と一瞬思いはしたが、語尾に「だもん!」などとつけるような、きょう日NHK教育の幼児向け番組でしか聞かないような台詞を吐く、幼児退行を起こし始めている菊政に、何を言おうがさっぱり効果など上がらないであろうことはおおよそ察しがついてしまった。
 だからと言って、横でニコニコしている仙石に助けを求めたところで、完全に「この恥ずかしがり屋さんめ! 大丈夫、おれがちゃんと歌わせてやるから!」という、行にとっては甚だ迷惑な「勘違い親切まっしぐら」の仙石が、自分の意をまともに汲んでくれるとは、これまた到底思えない。

 他に頼れそうな人間…行は「逃がさないぞ」という意思を目にみなぎらせた菊政に服を掴まれたまま、必死になって頭の中の「いそかぜ曹士メンバー表」を繰っていた。

 いつもなら、兵長――田所が一番アテになる。だが…。

 行はさっきまで田所が歌って…もとい、がなっていた方を振り返ってみた。

 そして、やはり…と思いつつげんなりする。

「うっす、一番、田所祐作士長、うずしおやりまーっす!」

 野太い叫びが上がったが早いか、田所はその場に立ち上がると、一升瓶を口に突っ込んで一気にそれをあおった。周囲の曹士の大歓声の中、田所は一升瓶を両手で回しながら、それの中身を空けていく。ある程度中身が少なくなった酒瓶で始めたからいいようなものの、それにしたって自分のような「特殊な訓練」を受けていた者でなくては、ベロベロに酔ってしまうであろう酒量であることは間違いない。

 こりゃだめだ、アテにならない。

 あっさりと頭の中で「失格者」の烙印を捺して、ついでに(明日は絶対に二日酔い)と特に必要ではないメモをその横に貼り付け、行は田所のことはひとまず頭の片隅…の更に外側に追いやった。

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