いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

「ほらほら〜、掌帆長だってあんなの歌えるんですよ〜。先輩が知らないわけないでしょう〜?」
 行の視線を追って、同じように振り返った菊政が、すっかり絡む口調で言う。
「…あんなのって?」
 少しでも話が逸らせられるなら、それでいい。そう思いながら行は尋ねてみた。
「おととい出たばっかりの歌ですよ。ドラマの主題歌だから聞いたことはあるって人は多いけど、全部聴いたことある人はまだほとんどいないんじゃないかな?」
 感心したように、菊政は胸の前で腕を組んで、コクコクと何度も頷いている。
「おれは、知らねえなぁ、この曲は」
 仙石はそう言いながらその場に胡坐をかいてしまった。「どっこらしょっと」
「先任伍長は連ドラなんかご覧にならないでしょ?」
「あ〜、アイツは娘がいるからなぁ、仲良いんだよ、これが。なにせ交か…っと、いけねいけね」
 なにか言いかけた仙石はプルプルと首を振っている。えー、なんですか、なんですか、言いかけてやめるなんて気になるじゃないですか〜、と騒ぎ出す菊政に、仙石が、いやこれは言えんのだ、と返す。

「えー、えー、なんだろ…ヒントー!!」
「言えねえってのー!」

 おとなげなく大騒ぎである。同じ自衛官だと思いたくない。

 しかし、そんなことは些細な問題でしかない。行が大きな衝撃を受けていたのは、菊政の横に仙石が座り込んでしまったということに、だ。それはつまり、仙石が文字通り「腰を据えて」しまったということで、これで完全に「逃げ場なし」になってしまったことを図らずも再確認してしまった行は、ショックからしばらく呆然となってしまった。

 しかし、そこは現役ダイス工作員。ショックが一段落すれば、考え得る最善の対処法を練るべきである、と行は意を決した。

 これは、腹を括るしかない。

 そう決めて、一人頷くと、傍らに置かれたまま忘れ去られていたカラオケリストを手にとって、大げさでなく決死の覚悟でページを繰り始めた。

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