いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 菊政によると、カラオケというものは曲ごとにナンバーというものが割り振られていて、それを今菊政が持っているリモコンで入力するものなのだそうである。だから曲のナンバーだけを伝えれば、曲が始まるまでは何を入力したのか分からないのだそうだ。

「…じゃあ、間違えて入力した場合は曲が始まるまでわからないってことか?」

 そんな事は別に知らなくてもこの後の人生において困る事もないだろうとは思うのだが、仕入れられる情報なら貪欲に吸収しようとしてしまうのは工作員としての性なのかもしれない。行は菊政に手渡されたリモコンをシゲシゲと眺めながらそんな事を尋ねてみた。
「基本的にはそう云うことになりますね。ただ機種によってはモニターに予約曲としてタイトルが表示されたりもしますよ。えーっと、今日使ってるのは…」
 菊政はそう言ってからくるりと後ろを向くと、特に眩しくもないだろうに手びさしを作って「漢波」の向こうに置かれているカラオケ本体を確かめる。「予約ナンバーだけが表示されるタイプですから、入力が間違っているかは確かめられるけど、何がかかるかは始まってみないと本人以外には分からないですね」

(それはつまり、「入力に失敗してしまった」という言い訳はできないという事だな?)

 行は頭の中だけでそう結論付けた。一瞬でも「逃れられるかも」などと思った自分が馬鹿だったらしい。

「えーっと、使い方…わかんないんですよね? 予約…入力したい曲のナンバーを押して…そう、で、セット、転送…そうそう」
 菊政は行の手を取るようにしながらポチポチとリモコンのキーを叩いていく。ピッという音がして、どうやら「予約」というのが完了したらしいと行にもなんとなく分かる。しばらくするとモニターの端に、「予約受け付け」という表示と共に、行が選んだ曲のナンバーが表示された。今まで菊政が行にリモコンの使い方をレクチャーしているのを眺めているだけで暇だったらしい仙石は、それを目を細めるようにして確認すると、行のことを思ってなのだろう、ご丁寧な事にそのナンバーをわざわざ読み上げてくれた。そして、

「間違ってねえよな?」

 殊のほか明るい声で念を押してくれる。ええ、あってます、と酷く面白くなさそうに答える。いよいよ逃げ場がなくなったということを再確認させられたのだから機嫌がいいわけがない。

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