いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 そんなものなんだろうか、行はよく分からない、そう思った。確かに、花と言うものはきれいなものなのだろうとは思うが、自然などと言うものは克服し、制圧するものであって、呑気に見上げたことなど今まで皆無だった。

 歳をとると、わかる。
 そんなものなんだろうか。

 …おれには、一生わからないままなのかも知れない、そう諦念に近い感情が胸をふさぐ直前、行の手になにかが触れた。なんだ? と殆ど反射的に自分の手に目を落とすと、仙石の無骨な手が何かをつまんでいて、それを自分に手渡そうとしているらしかった。

「お前にはまだわかんないかな?」
 悪戯めいた声がして、無骨なその手が離れる。

 手の平に乗せられていたのは、散り落ちてきたらしい桜の花弁だった。

 仙石の意図が分からなくて、その顔を見返すと、仙石は穏やかに微笑んでいた。それは多分、自分にはよくわからないけれど、子供を見る父親の目なのだろうと行はぼんやりと了解した。
「おれもおまえ位の時は全然わかんなかったよ。春がいい季節なんて世間じゃ言ってるけど、おれは空気が生ぬるくなる感じがして、どうも好きじゃなくてなぁ。
 でもな、おんなじ毎日がずーっとさ、ずーっとな、続いてるとな、昨日通った時には枯れ木みたいだった木に蕾がついて、次の日には色づいて、その日の帰りには花が開いてって、そうやって変っていくものがあると、世界って奴は動いてるんだなって、それだけで上々だって思えるんだよ」

 桜を見上げながらそう言った仙石は、うん、と小さく頷いてから行の目を覗き込むようにした。なんだか胸が痛くなるほど懐かしい、ひどく優しい目だった。

「変っていくもの…?」
 真っ直ぐにその目を見返して、呟くようにそれだけを反芻するように口にすると、仙石はそう、とまた頷いた。

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