いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

「おまえの歳じゃ、未来洋々って感じだろうから分かんねえかも知れないけどな、この歳になると毎日おんなじ事の繰り返しで、自分がなんのために生きてんだか分からなくなることもあるんだよ。いや、自分が生きてるんだって事自体、よく分からなくなってくる。でも、今日は昨日と違う日なんだってことをさ、自然てやつは教えてくれる。今日が昨日と違う日なら、昨日は出来なかったことでも今日はできるようになってるかもしれねえだろ? おれはこの歳になって、この国に生まれてよかったって思えるよ。四季があるってのはいいことだ」

 そう言ってから、仙石は父親の目をしたまま照れくさそうに頭髪の短い頭をぼりぼりと掻いた。「なんか…くせぇ事、言ってるな」

 行はもう一度、手の平の中の桜に目を落とした。薄桃色の花弁が、自分を容認してくれているような気がして、もう一度、頭上の桜を仰ぐ。

 雑踏のようなさざめきの中で、音もなく降り落ちてくる桜は、まるでこの世ならざるような美しさだった。

 『昨日はできなかった事が今日はできるようになっているかも知れない。』

 行はなんだか自分を取り巻く、不確かで暖かな、今まで幻のようだと思っていた世界の輪郭に触れたような気がした。そして、その世界に、もしかしたら自分もいていいのかも知れないと、ちらりとそう思う。それを実現するための一歩目が、何故かカラオケであるというのはなんだか妙な具合だが、それを都合よく、美しいものや簡単なものから選ぼうというのは贅沢な話なのだろう。

 自分の番が来るまであと3曲。なんだか少しドキドキし始めた。

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