| いそかぜ おはなみ プロジェクト |
20 cherry blossom viewing. ISOKAZE |
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| 「…この固形物は?」 行は常に冷静である事を要求される習い性か、仙石より先にいつもの冷静さを取り戻すと、再びカップの中に目を戻した。つられた菊政もカップに目を戻すと、 「酒を飲む時はタンパク質を摂らないと胃を痛めるそうなんで、クラッカー用に置いてあったクリームチーズですが?」 クリームチーズにゴマ油…? 「…お前なぁ、なんでチーズにゴマ油なんだよ!」 仙石が脱力と混乱に苛まれた顔でそう言うと、菊政は悪気の欠片もない顔で、 「え? だって、ヨーロッパだかのチーズでオリーブオイルに漬かってる奴、ありますよね?」 確かにある。チーズの酸化を防ぐためにそうするのだと聞いた事があるが、だからと言って、 「だからってゴマ油とオリーブオイルじゃあ違うだろうが!!」 仙石が思わずというように怒鳴ると、菊政は大きな目をうるうるさせて、 「だって他に油っていったらラー油しかなかったんですよ? ラー油じゃあ、のど痛めるじゃないですか!?」 その返答に仙石は溜息をついて、ついでに肩も落とした。別にラー油を入れろとは言わないが、だからといってゴマ油を入れなければいけない必然性もないじゃないか…。そう、顔に書いてある。 「…じゃあこの茶色の液はなんだ?」 相変わらず場違いなほどの冷静さを発揮しつづけている行は、そう言って再度カップを爪弾いた。菊政は半ば怯えたような、不貞腐れたような目をしたまま、一度ぐすぐすと鼻を啜ってから、 「それは、『午後の紅茶・ストレート』です」 と迷う素振りもなく言い切った。 ……。 「…菊政?」 その声に横をうかがうと、仙石はこれ以上はできないという程の笑顔で菊政に語りかけていた。元の顔がイカツイので一見とても笑顔には見えない鬼瓦のような面相になってはいるが、もうすぐ乗艦一年という菊政には、これが仙石の最上級の笑顔であることが理解できたらしく、ちょっとだけ気持ちに余裕が出来たのか、怯えの消えたいつもと同じ人懐っこい目を向けた。犬で言うならシッポぱたぱた、舌がぺろんと出ているような、人の保護欲を刺激する、ある意味菊政の必殺技の表情である。 |