いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 酒で頬を赤く染め、ぐずぐず泣いて目も真っ赤にし、全身これ赤一色という体になった菊政は、先まで泣いていたのは一体なんだったのやら、既にいつもと変らぬ笑顔になっていた。そして、
「結構うまいですよぉ?」
 などと言いながら「クリームチーズの午後の紅茶漬け・ゴマ油添え」をモグモグと食っている。
「…そうか」
 行はそんな菊政から微妙に目を逸らしながら呟くように返事をしている。そうだろう、そうだろう、下手に目を合わせて、「それは良かったな」などと笑顔で応対したら、「うまいっすよー、先輩もどうぞー、はい、あーん」などと言われつつ、鳥の雛よろしく口の中に「謎の食べ物(?)」を突っ込まれかねない。

 如月もだいぶ人付き合いが上手くなったなあ…などと幾分見当違い、かつ多分に現実逃避の感慨を抱きつつ、仙石もまた菊政から微妙に目を逸らしていた。

 自衛隊生活30年の間には、先輩からの謂れのない嫌がらせもあるにはあり、得体の知れない食べ物を食わされたりなんてこともあったわけだが、ここまで不可思議な「食物らしきもの」は見たことがなかったし、それを何の悪意もなく食べさせられるというのもちょっと遠慮したい事態であった。

 逸らされた目が宙を泳ぎ、カラオケのモニターが視界に入ったのは偶然だった。丁度マイクを握っていた第四分隊の海士の歌が終わったところで、モニターには、まだラストのしつこいほどのリフレインが続いている。だが画面の方はそんなことにはお構いなしで、その上部に「次曲ナンバー」と言う表示が点滅しはじめていた。何の気なしにぼんやりとそのナンバーを眺めていた仙石は、ふと、このナンバーは見たことがあるな、と胸中で呟いた。なんだろう? なんで知ってるんだ…? としばらく首を傾げていた仙石だったが、直後、脳裏に閃いたものがあった。

「おい、如月!」
 仙石は勢いよく立ち上がると、どこか遠くを見ている行を呼びつけた。突然の大声に一瞬面食らったような表情になった行であったが、自分の「先任伍長声」にいつもの自分を取り戻した様子で、すぐに唇のあたりをきゅっと引き締めると、
「なんですか?」
 真剣な口調で問い返しつつ、すっと音もなく立ち上がった。

 が、真剣な表情の行に対して、仙石はといえば「にま〜っ」と口元を「もうこれ以上緩めようがございません」という程に緩めていた。そのあまりの笑顔に菊政が「不可思議食物」を口に運ぶ手を止めて、なにやら恐ろしいものでも見るような目で――いや、実際恐ろしいのだが――その仙石を見上げている横で、行は無表情の中に一欠片の動揺を滲ませた目で仙石を見返してくる。

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