いそかぜ おはなみ プロジェクト 
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    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 上半身を仙石に引きずられ、足は地面に半固定状態のまま、行は自己の意思とは無関係にモニターの前まで運ばれてゆき、そして呆然としたままその手にまだ他の人間の体温の残るマイクを握らされた。
「ん、これでいいじゃないか!」
 まるで七五三の子供の写真を撮る父親のような顔をして、仙石はうんうんと満足げに頷いている。未だ呆然としている行の足元では、
「からおけーからおけー」
 菊政が何が楽しいのかきゃっきゃっと歓声をあげている。これでは、「こっそり歌ってこっそり退却」というひどくつまらない作戦を立てていた行の目論みはまさに水の泡で、当然のようにいそかぜ曹士全員の注目を集める事となっていた。それだけならまだしも、行のそのアイドル顔負けのルックスは周囲の無関係な花見客の注目まで集めてしまい、いまや「如月行カラオケ・オン・ステージ」状態である。

(何故こんな事に…)

 行は諦めきれずにそんなことを思っていたが、目の前のモニターに「次曲ナンバー・再生・歌い出し」という文字が表示されれば、カラオケのシステムなぞ知りはしないが、多分もうすぐにでも歌わねばならぬのだろうと覚悟を決めた。

 ――おれは、逃げない。

 その言葉を呪文のように胸の中で繰り返し、行は一度深く息を吸い込むと、マイクに口を近づけて、曲が始まるのを待つことにした。

「そー言えば先輩って何歌うんですか〜?」
 そんな決意を反故にするかのごとく、あいかわらず足にぶら下がったままの菊政は、そう言って小動物的に首を傾げてみせた。それに対して行は、マイクを握ったまま微動だにせず、まっすぐにモニターを見詰めたまま、
「なにって…別に普通だ」
 呟くように返答した。本人に自覚はないが、相当に緊張している。いつも以上に声も顔も無表情で、これなら「へのへのもへじ」の方がよほど愛嬌がある。
「普通って言ったって色々あるじゃないですかぁ」
 菊政は不満気にぷぅっと頬を膨らめると、両手に掴んだ行のズボンをぐいっと引っ張っる。まるでスーパーの菓子売り場で駄々をこねる子供のようだ。

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