| いそかぜ おはなみ プロジェクト |
26 cherry blossom viewing. ISOKAZE |
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| 「…おれは、歌なんて聞かないって言っただろう?」 あいかわらず目線はモニターに固定したまま、行はそう言って菊政が貼り付いている左足をブンブンと振ってみせた。要は「邪魔だから退け」と態度で示してみたわけなのだが、そんなものが通用するならこんな事態になど最初からなっていない。むしろ意固地になったような菊政は、ますます頬を膨らめて、 「だからってまさか『般若心経』とか入れたんじゃないでしょうね?」 などと言いながら、さらにがっちりと足にしがみつき直した。 「…そんなもんまであるのか…」 菊政のとんでもない発言に思わず足元に目をやってしまった行は、菊政がこくこくと頷くのを見て絶句した。もはやカラオケという文化の凄まじさに圧倒されるより他ない。感心を通り越して呆れながらも、これが「普通の人」の生きる強さなのかもしれないな、微妙にずれている感慨が湧き上がった。 と、そんな行の感慨など吹き飛ばすようなタイミングで、菊政が、 「あ、先輩、もうすぐッスよ」 むぎゅっと足にしがみつきつつモニターを指差してみせた。 「よくわかるな」 「チェンジャーの音と画面のノイズでわかるんですよ」 …その観察力を他の事に役立てたらいいのに。行は口には出さずに溜息をついた。 それまで真っ黒な画面の中「待機中」の文字だけを表示していたモニターにパッと絵が映った。 静かな森の風景がそこに映し出され、いそかぜ海曹士、周囲の花見客の目が一斉にモニターに集まる。そして、なぜかシーンと静まり返った花見会場をよそに、スピーカーからどこか郷愁を誘うような、懐かしさがこみ上げてくるような前奏が流れ出した。 しかし、その前奏は確かに郷愁は誘ったが、どこか間抜けで、そして異常に楽しげなメロディで。 ♪ ちゃららっちゃ ちゃららららー ちゃららっちゃ ちゃらららら〜♪ 一番最初に反応したのは仙石だった。な、なんじゃこりゃ…と開いた口が塞がらないどころか、いっそ顎が外れるのでは? という程の大口を開けて呆然としている。次に反応したのは若狭。咥えかけていた煙草が指の間からポロリと落ちてコロコロと転がっていったが、それにも気がつかない様子で同じく呆然としている。周囲の花見客もおおむね似たような反応を示し、他の曹士は揃って間抜け面を並べることとなった。 |