| いそかぜ おはなみ プロジェクト |
29 cherry blossom viewing. ISOKAZE |
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| 周囲の見ず知らずの人間も口笛を吹いたり、手を叩いたり、とにかく楽しませてもらったことに感謝の意を伝えて寄越す。 そうなんだよな、こいつ、こうやって自覚なしに人の心ん中に入り込んで、なんとなくみんなをまとめちまうんだよな。 仙石は、「なんなんですか?」と不愉快そうに眉を寄せた行に近づいていった。 その肩にふわりと花びらが、まるで降り注ぐように落ちていく。 ――こいつはまだ若い、桜の良さなんかきっと全然わからない。 でも、だからこそ、「今日は昨日と違う日になるかもしれない」、そんなことにすがらなくても平気なのだ。自分でも気がつかないうちに、ひとりでに、どんどん変わっていく。 春だけじゃないのだ。桜だけじゃないのだ。おれはこいつらと一緒にいる。同じ艦に乗っている。そこで変わっていくものをずっと見てきた。いつだって、「昨日と同じじゃないもの」に囲まれていたんだ。 無駄じゃない。同じことの繰り返しじゃない。虚しいことなんかない。おれは、自分の艦の「桜」たちを、せいぜい世話して「いい花」が咲くようにしてやらにゃならんのだ。どこよりもきれいな花を、な。 「おまえ、絵だけじゃなくて歌もなかなかじゃないか。 …今度、一緒にカラオケでも行こうか。こんな外じゃなくてちゃんとした音響の、さ」 落ちた花びらごと包んで肩に手を置くと、戸惑った顔を見せた行はなぜか一瞬だけ怒ったような顔になり、それから呆れたような顔になり、最終的にはどこか捌けたような顔になった。そして、 「ええ…誘ってくだされば」 そうとはわからない程度ではあったが、かすかに笑った。いい顔するじゃねえか、と仙石が思っていると、同じものを見上げていた菊政が、足元から「おれもー!」とあいかわらず行の足に貼りついたまま、のんきな声を上げた。 一期一会の花見客たちはみな一斉に吹き出した。 |