| いそかぜ おはなみ プロジェクト |
3 cherry blossom viewing. ISOKAZE |
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| 仙石が行の視線を追うと、すっかり頬を赤く染め「出来上がってます」といった風体の菊政が田所の歌うカラオケに無邪気に拍手を送っていた。どう贔屓目に聞いてみたとしても、けして上手いとは言いかねる歌声であったが、酔っ払いどもにとっては上手い下手よりノリの方が大事なのだろう、周囲の海士も野太い歓声を上げていた。 「…なんちゅーか、ありゃ騒音公害だな…」 どうにか立ち上がりつつも呆然と呟いた仙石に、微かに肩をすくめた行はどうやら同意の意を示したようだった。 その動きがあまりに自然で、逆に仙石はふとそれに違和感を感じてしまった。当たり前の仕草なのに、如月がすると違和感がある? そういえば…なんでだろう。 仙石は無意識のうちにその目を覗き込むようにしていた。 「…なんですか?」 嫌悪、ではない。行の口から漏れたのは不審の声だった。唇の端を少しだけ下に歪めた表情は、歳相応の「反抗期のガキ」といった様子で、仙石はなんだか少しほっとしていた。それはいつも何だか一人だけ高みにいて、世俗のにおいをさせていない行から滲んできた「生活感」のようなもののせいだと仙石は思う。けれど、そのままそれを口に出したら、なんだか折角近づいた距離がまた遠のいてしまいそうで、無意識のうちに、 「いやさ、お前、酒強いんだな」 と関係ないことを言っていた。だがその問いに行は、 「…酔えないんです」 苦笑しようとしたらしい頬の筋肉が、痙攣したようにひきつって、なんだか哀しい笑顔になった。その表情も次の瞬間には掻き消え、そのまま押し黙ってしまう。気詰まりな空気が場に流れ、仙石はなんとか場を取り繕おうとわざと明るい声で、 「お前はカラオケ、やんないの?」 尋ねてその目を覗き込んだ。ちらりとこちらを見返した目は、なんと答えようかと逡巡している目だった。 お、脈あり、か? と胸中の片隅に呟いた仙石は、 「歌えよ。おれ、お前の歌、聞いてみてえな」と、お世辞にもスマートとは言いかねるウィンクをしてみせた。 |