いそかぜ おはなみ プロジェクト 
  

    cherry blossom viewing.

      
ISOKAZE

 やはりというか、なんというか、相変わらず「好奇心・爛々」の4つの目が、わざわざ腰を折ってリストを覗き込んでいた。行が顔を上げたのに気がつくと、
「お、決まったのか?」
 早急な仙石の声が飛んだ。

 ページはいまどき珍しい「花柄・フリルいっぱい・背後にシャボン玉」な感じの女性アイドルのページである。

 おれはこんなもんを歌うと思われてるのか? うんざりを通り越して、なんだか絶望的な気持ちになってくる。
「…まだです」
 と心の底から嫌そうに答えると、今度は菊政が、
「先輩ってどんな曲聞くんですか? 洋楽系? 邦楽系? 邦楽だったら平井堅とか似合いそうですよね? いや…案外、カンジャニとかハロプロ系だったりして。しかもメロン記念日だったりしたら、おれ、ツボすぎるんですけど〜」
 にまにまと笑い出したところを見ると、何かよほど自分には似合わない歌手なんだろうという事ぐらいはわかるが、一体それは何者なんだ? と行は心の中だけで嘆息した。「ひらいけん」というのは多分人名なんだろうが、「かんじゃに」ってのは何だ…? 「はろぷろ」というのはどこかのプロダクションの略なんだろうが、「メロン記念日」っていうのは夕張市観光協会のテーマソングでも歌ってる集団なのか?

 わからん。わかりたくもないが。

「…本当に音楽なんか聴かないんだ。歌手の名前も全然わからない」
 憮然とした表情で応じて、ぱたんとリストを閉じる。
「あ〜! ダメですよ、今更!!」
 それを見た菊政が子供のようにぷぅっと頬を膨らませた。腰に手まで当てて、まるで小学校の教師のようだ。「せっかくそれ持って来たんですから、おれの労力分は歌ってください」

 どこをどうするとそういう理屈になるんだ。行はそう言おうと思って口を開きかけたが、言い出す前に、
「そうだぞ、如月、ちゃんと歌え」
 仙石が先任伍長の声で命令する方が早かった。しまった…! そう思ったときにはもう遅くて、仙石の言に力を得たらしい菊政は再度満面の笑みを浮かべると、行の横にすばやく座り込み、呆然としている行の手からひったくるようにリストを取り上げる。

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