| 約束 ――崩壊まで―― 15 |
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(兵長が変なこと言うからだ…) 溜息混じりに胸の中で呟くと、いつもよりは少し心が晴れたようだった。大抵の場合、菊政は起こった事の原因が何にせよ誰かの責任だと人を責めるようなことはしない。80%位は運のせい、10%はタイミング、9%は何故だか(なにも悪いことなどしていなくても)自分のせいだと思う。そして、時々は業と他人のせいだと思うようにしている。「いつも自分のせいでは身が持たないし」と菊政はぼんやりと口の中で独り言を呟いた。記憶の奔流はまだしばらくは止まらないだろう。それを知っている菊政の、せめてもの自己防衛だった。 祖母は未だに菊政に両親の結婚式の時の写真を見せたがらない。祖母ははっきりとは言わないが、その時すでに母親の腹が、それとわかるくらいにはっきりと膨らんでいたというのがその理由らしい。いわゆる「できちゃった結婚」というもので、今ではよく聞く話だが、当時は、それも人口も少ない田舎町では恥以外の何ものでもなかったようだ。存命だった祖父は激怒し、母に「二度とうちの敷居はまたぐな!」と怒鳴りつけたという。 両親が知り合ったのは、母が高校卒業と同時に就職のため上京した東京だったそうだ。父は母の会社に出入りしていた営業マンだったが、家業を継ぐ前に外で修行して来いという意味合いで家を出されただけのボンボンだった。それも、修行といっても表面上、形式上のものでしかなく、どうも取引相手に対してのパフォーマンス程度の意味合いしかなかったようである。そのせいか、「それなり」に仕事をこなすだけという人間だったらしいのだが、田舎から上京してきたばかりの娘には、それはなにやら都会らしくカッコいいスタンスだと見えたらしい。父からすれば遊びのひとつくらいのつもりで声をかけたのだろうが、母はそんな父にすぐに参ってしまった。その、「都会らしさ」に。 一方、父は何年かしたら地元である地方都市に戻り、自分の親が経営するそれなりに大きな会社に重役候補として再就職するつもりでいた。その時には、母という「遊びの女」など捨て、親が決めた「ふさわしい相手」と結婚する。そう割り切っていたのだろう。 |