約束 ――崩壊まで―― 21

 最近、先輩の目が見れない。

 揚艇機、機械室。度重なる「普通じゃ考えられない事故」。なぜかいつもそこに先輩の影がちらつく。
 先輩のせいじゃない、そう思う。信じたい、先輩はそんな事をする人じゃないって。でも。

 でも、おれは先輩の事、全然知らないんだ。



 今日は午後から魚雷の訓練があるというので昼飯をいつもより少し早めにすませた。おれたち魚雷員は他の科員よりも当然集合時間が早い。十二時半には集合だから、普段通りの時間に食べ始めたら…まあ、間に合わないことはないだろうけど。
 食堂で買った缶コーヒーを啜りながら、いつもより静かな居住区の、自分のベッドの柵に腰を掛けて、一人ぼんやりしている。静かなのはただ単純にひとけがないからだ。みんな今ごろ、飯喰ってるんだろう。

 いつもは、大体歳の近い海士どうしで一緒に食べている。別にそうするっていう約束事があるってんじゃなくて、自衛隊の分刻みのスケジュールで動いていれば自然とそうなる。
 そうだ、そういえば今日は兵長と一緒に飯喰わなかったから、もしかしたら少し助かったのかもしれない。兵長、あれでスルドいトコあるから、最近おれがあんまり飯喰ってないの気付いてる。昨日は、食べ終わった後のおれの皿を見て、なんか言いたそうな顔してたし、今日あたり、「なんかあったのか?」って聞かれてたかもしれない。…ああ、でも、今日はガブってるから、「酔いました」って言えば済んだかな。

 胃の辺がもやもやして、時々痛い。精神的に参って飯喰えなくなるなんて初めてだ。ホントはコーヒーは飲まない方がいいのかな、と思う。確か、コーヒーって胃に良くないんだよな?
 先輩に訊けば、多分教えてくれるけど。あの人、すごく物知りだから。



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