約束 ――崩壊まで―― 24

 おれ、先輩に憧れてる。頭イイのも、顔も、スタイルいいのも、喧嘩強いのも、あの誰にも媚びない態度もかっこいい。
 頭を冷やしていた手を下ろす。丁度目の高さになったとき、ふとこの間のことを思い出して、自分の手をじっと見てみる。先輩と指切りした小指。

 先輩の指は冷たくて、乾いていた。

 それでも、ぎゅっと握って、ぶんぶん振り回していると、その冷たい皮膚の下から、じんわり体温が伝わってくるのがわかった。

 それはまるで、硬質で冷たい見た目とは裏腹にとても優しい、先輩そのものって感じだった。おれはその時、この人と仲良くなりたいって、そう思った。

 でも。

 でも、先輩には近づかない方がいい気がする。理由なんてないけど、この人に近づいちゃいけないって。こういう直感って、おれ、外れた事がない。だけど、今回はそんなあやふやな感覚になんか負けるもんかって、そう思った。根拠なんか何もないけれど、なんでだろう、先輩に近づけたら、なんだかおれも変われそうな気がするから。

 今までこんな風に思ったことなんてなかった。何をしたって、どう努力したって、もう決まってることは変えられっこない、足掻くだけ無駄なんだって最初っから諦めてた。いや、諦めるどころか、そんな事考えもしなかった。

 そんなおれが、変わりたい――もっとしっかりしなきゃ、なんて思うこと、もう二度とないかもしれない。

 だから、引き下がらないって決めた。



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