| 約束 ――崩壊まで―― 27 |
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| 着替えを終えると通路の隅のラックに積んであるテッパチを被って、甲板へ上がっていく。四方を灰色の壁に囲まれて、あげく床まで同じ色。テッパチも、一年の間に慣れたとはいえ、こんな波が荒れている日にはいくらなんでも急過ぎるだろうと感じるラッタルも、何度もペンキの塗りなおしを重ねた結果、妙な丸みがついてしまった手すりまでも灰色一色とくれば、さっき一瞬だけ晴れた気分まで暗くなりそうだ。 溜息を漏らしそうになった瞬間、不意に足元が斜めになって、咄嗟におれは壁に手をついた。 ローリングしている。床から伝わる感覚に、今日はやっぱり、もう一分の疑いもなく、確実に波は荒れてると溜息をつく。船酔いにはそんなに弱い方ではないけれど、ものには限度ってモノがある。ああ、やだやだ、と首を軽く振りつつ、足取りは重く甲板に向かっていると、同じ魚雷員の先輩たちに出会った。なんとなく合流して、ぞろぞろと移動していると途中で、 「なんだ、顔色、悪いな」 先輩の士長にテッパチの下から覗き込まれた。 「え、別にいつもどうりですよ」 「そうか? なんか青白いぞ。まあ、今日は波、ひでえからなあ、酔ってるんじゃねえの?」 士長はそう言って、ぽりぽりと顎を掻いた。そんなにひどい顔をしてるんだろうか? そう思ってよくよく見れば士長も顔が青白い。 「士長こそ、酔ってんじゃないんすか?」 冗談めかしてそう言い返すと、テッパチの上からポンと一つ小突かれた。「うるさいよ」 「しかし、ホントに今日訓練なんてやれんのか?」 前を行く3曹が、ふと、そう呟いた。 水密戸をくぐって、甲板に出る。相変わらず波は酷いけど、天気自体は悪くない。直射日光の当たる甲板は、照り返しもあって猛烈に暑い。甲板の塗装は灰色だけれど、これで黒ければ巨大なフライパンみたいなもんだ。ゆらゆらと陽炎まで見える。甲板に出た瞬間はその太陽の眩しさに目を細めていた他の魚雷員たちも、少し目が慣れてくると、今度はちょっとだけ空を見上げて、口には出さないけど相当うんざりしたようだった。晴れ渡る空に遠く入道雲、真っ青な海。絵葉書みたいな景色だったけど、あっというまに噴き出した汗の不愉快さの前にはそんなものなんの意味もない。おれもうんざりしつつ格納所に向かう列に加わった。 と、目の前に今はちょっと会いたくない人の姿を見つけた。 |