| 約束 ――崩壊まで―― 3 |
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| だが、そんな行の逡巡であるとかが菊政に伝わろう筈もなく、その沈黙に耐えかねたように、菊政は消え入りそうな声で言をつないだ。 「おれ、先輩に嫌われたくないです。だから、迷惑なら…」 「迷惑じゃないって言ってるだろ」 菊政が言い終わるのを待たずに、強い口調で言い切ると、びくりとその肩が揺らぐのがわかる。我知らず口をついたその声に、行も内心自分で驚いたが、驚いたように顔を上げた菊政の視線を正面に捉えると、何故か今にも泣きそうに見えるその目に、なにに怯えている? と苦い感慨が浮かび上がった。 「お前がいたいならここにいれば良い。迷惑ならそう言う」 行は菊政の目をまっすぐに見つめたままそれだけ言うと、ぷいと菊政にまた背を向けスケッチブック代わりのノートにこんがらがった配管を描き込む作業に戻った。 微かに頭痛がするのは、血圧でも上がっているのか? 冷静になろうと自分の体の変化を列挙してはその理由を分析した。だが、どれだけ薄暗い機械室の配管に目を凝らしても、菊政の泣き出しそうな目ばかりが脳裏にちらついて、全く作業に集中できなかった。今日何回目かのため息をそうとは知られないようにつくと、行はそのまま作業を続けるのを諦めて、背後の気配を窺ってみた。 所在なげにその場に立ちすくむ子供のようだ。 それでも、言うべき言葉はなにも浮かんでこない。 なにか、伝えたいとは、思うのに。 |