約束 ――崩壊まで―― 33

 しばらくすると魚雷を曳航した内火艇が戻ってきたらしい、波の音の間からモーター音が聞こえてきた。

 さあ、仕事だ。おれと先輩の役目は、魚雷の前後についた控え索を引っ張って、魚雷の揺れを抑制すること。早い話が、魚雷に二本紐をくっつけて、それを両側からぴんと張ればフラフラ揺れなくなる、ただそれだけのことだ。

 揚艇機のウインチのモーター音がし始めた。鼓膜を振るわせる甲高い笛の音に合わせて控え索を引っ張り込む。艦がグラグラ揺れる度、先輩かおれかのどっちかが、索に持って行かれそうになる。それをなんとか、ぐっと耐えていると「控え索・訓練魚雷・控え索」を挟んで、今おれと先輩って繋がってるんだなあ、とちらりと思う。なんかお互いの命を預かってるって感じだ。


 信じてる。
 信頼している。仲間として。


 その時、不意に今までより艦が大きく後ろに傾いた。魚雷が後ろに引かれる。
 索がピンと張る。おれの腕の、肩の、全身の筋肉も一斉に緊張して、ギリギリ音がしそうだ。

 索の向こうに先輩がいる。先輩の向こうに仲間がいる。だから、死んでも離さない。

 なんとか、索ごと持って行かれそうになるのを持ちこたえると、今度は反動で艦が前に傾いた。
 魚雷の向こうで先輩が腰を落としたのが見える。信頼のロープがギリギリ軋む。と――



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