約束 ――崩壊まで―― 7

 ゲームと言えば菊政、というのは最早「いそかぜ」では当然の常識で、実際菊政に聞けばゲームの攻略法から新作ソフトの発売日まで分からない事はないとまで言われている。

 菊政は喧嘩を取り囲んでいた人の輪の外側の方にいた。人垣が田所の声に反射的にそちらに目を向けたからわかったことで、その立ち位置からしても、どうも菊政は事の当事者ではないらしいな、と田所はあたりをつけた。当の菊政と言えば突然の指名に驚いたようで、でぴんと背筋は伸ばしているものの、微かにだが肩が上がっていて、まるで叱られるのを覚悟した子供のようだ。
「いや、菊政は、言われてプレステ持ってきただけですよ」
 菊政に同情するように、輪になって騒ぎを囲んでいた海士の一人が答える。田所はふーん、と鼻で返事をすると、
「じゃあ、おっぱじめたのは誰だ?」
 人の輪をぐるりと見回した。すると、田所と目が合うより早く、
「自分です」
 と右手が二本上がって、一等海士二人が一歩前に進み出てきた。その姿勢は堂々としていて、おずおずと前に出てきて、ふたりの横でまるで自分が叱られているかのような顔をしている菊政の方が余程所在なげに見える。
「くだらんことで喧嘩すんなよ。ただでさえ狭いうえ、暑いんだからよ」
 こういう時、長身と言うのは便利なモノで、上からギロリと睨んでやれば、今までシャンとして微かな反抗の気配さえ漂わせていた当事者二人も、気圧されてグッと詰まった声を漏らし、それ以上は何も言わなかったし、言えなかった。
「それから、始めっから見てた奴、いるか?」
 田所がまたぐるりと輪を見回すと、再度、周りの目が一点に集中する。

 菊政、か。

 田所はふう、とため息をついた。



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