. ルール 15 . .

 旅慣れた身に夏場の軽装で大した量ではなかったとはいえ、「明日、あんたに急ぎの用がないのだったら…」と前置きした行が連泊の手続きをしてくれたのはありがたかった。この暑さの中旅行鞄を持ち歩かずに済んだのは助かったが、仙石にはその分、行の荷物の中身が気になった。

 それを扱う行の動作は神経質でない程度に慎重だった。

 頑丈そうな帆布のようなもので出来た袋にはおよそ愛想とか飾り気というものがなく、ただ荷物を運ぶためだけの包装材という印象で、特徴らしい特徴と言えば、袋の隅に油絵の具らしい染みがあることぐらい。大きさは…B4サイズ程度。厚みが殆ど感じられず、袋の外観からして四角いものが入っているようだから、中身はキャンパスか何かか? と仙石は中身について当たりをつけていたが、なんとはなしにそれを行に尋ねるのは憚られた。

 かわりに、
「どこへ行く気だ?」
 尋ねた仙石は、ほんの少しだけこちらを振り返った行の、

「約束を果たしに」

 という台詞に思わず立ち止まってしまった。


 かたわらを過ぎていくトラックの騒音に紛れることもなく、なぜか直接胸を揺するようなその声に、
「約束…?」
 聞くとはなしに呟いた仙石に、行はそれ以上答えようとはしなかった。何事もなかったように、いつも通りの寡黙な背中が遠ざかっていく。

 …けれど、その背中はいつもよりなお一層の秘密と、何がしかの重みを背負っているように見える。そして、その重みゆえに寡黙にならざるをえなくなっているのではないかと、なぜか仙石はそんなことを思った。

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