. ルール 20 . .

 無表情を装うおもての下に一抹の感情を滲ませる目。どうしたらいいのかわからない、所在ない子供のような目で行は、
「…わかっただろ?」
 とだけ訊いてきた。

 なにか感情が「すとん」と収まるべきところに収まった気がしていた仙石は無言を答えにして、行の横に立つと同じように今来た道を振り返ってみた。

 草いきれの道の向こう、見渡すばかりの緑の中に時折のぞく清冽な黄色は、多分近所の子供が種をばら撒いたひまわりの花だろう。そして丈の高い尖った葉が目立つ雑草の中でも、健気に太陽に向かって咲くひまわりの向こうには、銀鱗を撒き散らしたように輝く海が見えた。ゆるゆる、上っているのかどうかも判然としないような坂ばかりだったが、こうして振り向けば眼下にある海は遠く、こことそことを隔てるものなど距離の他には何もないというのに、まるで遠い別世界のように思えた。

 広島市からさほど離れてもいないのに、小さな漁港がある以外には大した産業もない田舎町。ここで菊政は育った。「ばあちゃんに家、買ってやりたいんです」とはにかんだように言った青年は、きっとここで育たなければ海上自衛隊入隊を選ぶことはなかっただろう。たとえ「ばあちゃんのため」に自衛隊に入隊したとしても陸か空かのどちらかで…。

 そうなっていたならば、多分…、そう思うと、深い青さを湛える海をほんの少し恨めしく思った。

 それほど美しい海だった。

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