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ルール 22 . | . |
| 「だったら別に海の方に向けて墓を建てる必要なんかない。おれは、甘っちょろいのかも知れんが、死んだ人間にこの景色を見せてやりたいって、そういう気持ちの現われなんだと思いたい。ずっとこの場所で…暮らさなければならなくなった死者たちに、同じ景色だけを見つづけて暮らさにゃならんのだとしたら、せめてきれいな景色を見せてやりたいって、な。 どこの町の墓もこんな絶景のところにあるわけじゃねえけど、ここは、そういう場所なんだ、きっと」 最後の方は自分に言い聞かせるような口調になっていた。そう言い聞かせることで、なんだかほんの少し救われるような気もした。だが、 「…死者に目はない。なにも、見えない。見ることなんて出来ない」 ひどく硬い声が返ってきた。冷淡にすぎると言っていいその内容とは裏腹に、それまでの口調とは違う、痛みを耐えているような硬い声。仙石は思わずぎょっとした顔を向けてしまったが、行はそんなことにも気がつかない様子で海に向けた目を動かそうとしなかった。 その目は海ではなく、その向こう、遠い彼岸を見ているようで、その手は関節が真っ白になるほどに硬く握りしめられている。 「死ぬってのは…そういう事だ」 呟くような声でそう付け足すと、行は肩にかけた荷物にふと目を落とし、その袋越しに中の何かをそっと撫でた。その手つきはいとおしむようなものではなく、それに触れるだけで痛みを感じるような何かが入っているような、そんな手つきだった。 「行こう」 まるで何かを振りきるように行は言って、仙石に背を向けると「境目」から「墓場」に足を入れた。 その瞬間から、その背中がまるで「生者」のものから「死者」のそれに変わったように見えて仙石はどきりとした。 急に足元から湧き上がってきた悪寒を追い払うように、仙石は慌てて煙草を携帯灰皿に突っ込みその背を追ったが、自分がその境界を踏み越えても何も変化があるようには感じられなかった。 けれど、やはり前をゆく行の背中は彼岸の気配を漂わせていて、近くにいるはずなのに、まるで鏡像に対しているような居心地の悪さと心もとなさを感じさせていた。 |
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