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ルール 26 . | . |
| 「…でも、おまえは約束を果たした。いいじゃねえか、それで」 本心からそう思っていた。別に慰めるつもりなどではなく。「菊政は、喜ぶよ。おまえが自分のことを気にかけてくれてたってことをよ。あいつ、おまえに、本当になついてたからな」 そう言って、仙石はもう一度行の描いた絵に目を戻した。そして、ふと気がつく。 肖像画の菊政は仙石の記憶する菊政の印象と同じように、ふにゃっと気の抜けるような笑顔だった。だが、よくよく見てみるとその目は笑っているようでいて、笑っていない。 笑顔の下にもうひとつ、不安を抱えたどこか落ち着かない目。どこか怯えているようにも見えるその目に気がついて、仙石は自分記憶の中の菊政の姿が瞬間、鮮烈になったのを感じていた。 なるほど、そう言えばこいつはこんな目をしていた。いつも笑っているけれど、心から笑ってはいない周囲に溶け込もうと作った笑顔。どこか脆さを感じさせるその印象は、そう言えば行とも似ていた。 菊政が作り笑顔で、それが見せかけだけのものだと知っていながら手放そうとしなかったものを、行は手に入れてから失うより先に自ら手放したというだけで、本質的には二人とも同じだったのだ。満たされず、乾いてしまった感情。けれども、だからと言ってそれを要らないと切り捨てられはしなかった。そんな部分が共鳴して、菊政は行にあれほどの好意を寄せていたのかもしれない。 だとすれば、この行の「約束を守る」という人間らしい変化を菊政は喜ぶことだろう。新幹線の中で海に向かって語ったように、「未来」の存在を信じ、生き甲斐を持つようになった行の変化を。 だが、そんな仙石の思いとは裏腹に、行はうつむけた顔をかすかに横に振った。 「…そうじゃないんだ」 なにが違う? 訊き返した仙石に行はようやく顔を向けた。 「気になってた、それは事実だ。あれからずっと、気になってた。でも、それは菊政の事を気にかけてたわけじゃないのかも知れない」 そこまで言うと、行はまた顔をうつむけてしまった。「…してしまった約束をどうしていいのか分からなかっただけなんじゃないかって…」 |
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